人形の行事について

重陽の節句のお話し

 暑い夏も終わり、秋を迎えますとめっきり朝晩涼しくなってきました。

 温度差に気を付けられて、おだやかにお過ごし下さい。

 

 ご存知のことと思いますが、日本には五節句といって1月1日(正月)、3月3日(ひなの節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽の節句)の節句の行事があります。

 本日は9月を迎えます、重陽の節句についてのべます。

 

重陽の節句のおはなし

重陽の節供

 重陽は9月9日、陽数(奇数)の9を重ねためでたい日で、「重九」といいます。わが国では「菊の節供」「九月節供」などとも呼び、9月9日を重陽の節とすることは中国の漢時代にはすでにはじめられており、それがわが国に伝えられ、年中行事として盛んに行われるようになっていきました。

 中国では、この日に野に出て飲食したり、「登高」といって丘に登る行事がありました。三国時代の魏の文帝は「以為へらく長久に宜しと、故に以て享宴高会す」といい、六朝時代の「西京雑記」に「九月九日、茱萸を佩び、蓬餅を食らい、菊花酒を飲み、人をして長寿ならしむ」といいました。また、この節供は菊薫る爽冷の佳期の九月九日に行われるので、もっとも好まれた節供のひとつでした。

 なかでも文人達、たとえば唐の詩人達は「九日詩」を多く残しており、白楽天(772846)の有名な詩、「九日巴台に登る」はその代表的なものです。「黍は香りて酒初めて熟し、菊は暖くして花未だ開かず。閑に聴く竹枝の曲、浅く酌む茱萸の酒。去年重陽の日、蕭条たり巴子の台。旅鬢尋ねれば已に白く、郷書久しく来たらず。觴に臨みて一たび首を掻、座客も亦た徘徊す」。ここにも重陽の節供の風格がみられます。すなわち「巴台」、高い楼台に登って晩秋の山野を遠望しながら酒宴に興じ、赤い実をつけた茱萸(かわはじかみ)の枝を頭に挿し、菊の花びらを酒杯に浮かべて長寿を願い、邪気を祓い災厄を除くことを合わせて願いました。「九」は「久」と音が通じ、茱萸の実は体内の毒気を除く妙薬、芳菊は延命長寿の霊薬と考えられています。なお、茱萸の木は山椒の実に似ていますが中核がなく、皮ばかりであるので、「かわはじかみ」と呼ばれています。はじかみは和名です。

菊慈童

 菊慈童は中国の仙童です。容姿が美しく周の穆王に愛されたが、16歳のとき、王の枕をまたいだ罪のため、南陽酈県山に流されました。しかし、菊を愛し、菊の露を飲んで不老不死になったといいます。そのことを多く絵画化することもありますが謡曲では、「枕慈童」として演じられます。

 それは周の穆王の寵童慈童(前シテ)は菊水を飲んで百歳の長寿を保ち、彭祖仙人と名を変え、魏の文帝に菊水を奉ろうと参内し、大臣(ワキ)と問答します。ここまでが前場で、後場は文帝が酈県山に行幸すると、再び慈童が(後シテ)が現われ、菊水の霊薬を立替金るのです。ちなみに、この謡曲の菊慈童の話は「太平記」巻十三「龍馬進奏の事」の記事、つまり周の穆王の霊鷲山参向譚と同系の説話を骨格とするものであることが指摘されています。

・愛知県の南部では、草で女の髪に結い、竹筒に頭を描いたものの上に指し、これをオカズラといって膳を供えたそうです。同じようなことはあちこちにあって、東北ではアネコ、静岡県地方ではオカンジャケ、伊豆ではハンマアサマなどといっています。伊豆のハンマアサマはハマオモトで作った人形で、床の間に飾って神酒、柏餅を供え、九日の夕方に川に流し、「烏賊とさんまとになってござらっしゃい」といって、おいおい泣くまねをしたといいます。三月の雛祭を思い出させるような風習ですが、八朔や九月九日に人形を祭るのは、かつては広くあったようで、「後の雛」といって俳句の季語にもなっています。江戸時代の俳句の本には上方、とくに堺に特有で「秋の雛祭りを堺の雛祭りと云ふなり」とあります。

 一方で、この日は秋の収穫祭らしき祝い事があちこちで行われます。九州北部では秋祭りはオクンチと呼ばれ、九日に行われるのでオクニチがなまったのだといわれています。長崎のオクンチもこれで、蛇踊りや工夫をこらした山車が出るので、今では全国的に有名になっています。鹿児島県ではホゼという名称になっていて、やはり盛大な祭が行われます。

 また、ナスを食べれば中風にならぬとか、栗節供といって栗飯を食べるという所もあって、特定の作物の収穫を祝うようになっている所もあります。徳島県の北部ではこの日を「烏の子分かれ」といい、烏の親子が栗のいがを食って分かれる、といいます。なぜかこの日は烏にまつわる神事があちこちで行われ、上賀茂神社(京都市)の烏相撲は有名ですが、かつては多賀神社(滋賀県)も同様の神事があったようです。

-日本人形協会発行の冊子より-

 

 本日は、重陽の節句のお話しをのべました。

 ご質問等ございましたら、なんなりとおっしゃって下さい。

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