掛軸のリメイク・リサイズをお受けしていますと、初歩的なご質問等があります。
本日は、名称とともに取り扱いの手順についてお話しします。
掛軸の取り扱い
掛軸は湿気に弱く、逆に過度の乾燥も嫌います。
冷房、暖房の効きすぎた部屋は避けてください。
晴れた日を選び、年2回は陰干しをしてください。
かけ続けると表装、本紙の傷みが早くなります(目安としては3ヶ月)。
保管するときは、湿気が少ない場所をお選びください。
掛軸のかけ方

巻緒をほどき、巻紙を取り、風帯を下にのばして折りぐせを直します。

軸全体を横にした状態にし、左手で真ん中を受けて持ち、掛緒の真ん中を矢筈で上へのばし釘にかけます。
掛け終わったら、矢筈をぬき、両手で軸先を垂らします。
少し離れた場所から表具の高さ、左右のバランスを点検し風鎮をかけます。
掛軸のしまい方
まず風鎮をはずし、やわらかい毛ばたきで軽くホコリを払います。
矢筈(やはず:掛軸を掛ける時に使用する棒)で釘からはずします。
矢筈は右側に立てかけておきます。

軸先を持って上の一文字のところまで巻き上げます。
畳の上で風帯は左右の順に折り重ねてたたみます。
軸からやわらかめに巻きます。
耳折れ防止のため、添付の厚紙を、たたんだ風帯の下に挟み、巻きつけます。

左手で掛軸を持ち、右手で巻緒を巻紙の上から巻いていきます。
紐はあまり堅く巻かずに、ゆるくかけるようになさってください。

図のように巻緒を掛緒にくぐらせます。

反対側も掛緒にくぐらせます。

やわらかい紙に包んで収納なさってください。
掛軸を長持ちさせるには、出しっぱなし、しまいっぱなしを避けてください。一年のうち3ヶ月は床の間に。9ヶ月は桐箱の中に収納します。収納時にも天気のよい日には陰干しをすることによって程よく湿気が加わり、家庭の風土に慣れてきます。このように扱っていただくことによって、本表装のものならば何十年使用していただけます。また、裂地、本紙が傷んだ場合にも仕立替えをすることによって、新たな命を吹き込むことができます。
最初の1本目は山水、四季花などの年中掛けを購入される場合が多いですが、最初の1本目を床の間に飾っていただくことによって春夏秋冬、祝い、仏事と取り揃えていただけるきっかけに必ずなります。
本紙の区別
紙本:和紙。墨のにじみを利用して渋く、味があります。

絹本:ぼかしなどの技法が可能なため、鮮やかに描きあがります(蚕の糸)。

一般的には手間は絹本のほうがかかりますが、紙本の場合はミスが許されないため、どちらが良し悪しで高額低額ということはなく、作家、お客様の好みにより異なります。

掛軸の種類
①年中掛け
四季花:梅、牡丹、桔梗、南天など
竹に雀:常緑の為たくましい生命力のあらわれ。何でも食べることから災難を食べ尽くす。静寂な竹、騒がしい雀の静動をあらわす(花と鳥のものすべて)
六瓢:「無病」。健康長寿、家庭円満。
水墨山水:あきの来ないすっきりした仕上がり、安らぎのある落ち着いた雰囲気を演出。季節は想像による。
彩色山水:風景をよりリアルに表現。より力強い表現。
②春(1~3月)
梅:一年で最初に咲く花(百花に先駆けて咲く)。厳寒に耐えて咲くため、子孫繁栄、長寿円満。
椿:雪、寒さに耐え忍んで咲くことから満願成就。
桜:日本の花。永遠の美。
その他、水仙・福寿草・桃・菜の花など
③夏(4~6月)
牡丹:上客をもてなす。年中掛けにも使用できる
菖蒲:「勝負」。単語登録にも使用できる。
紫陽花:初夏の床の間に涼風をさそう。
朝顔:朝一番に咲くことから汚れなさをあらわす。
龍門:黄河の龍門の瀧を鯉が昇り龍となる言い伝えから、立身出世・繁栄を願う。端午の節句にも使用。
川蝉:狙った獲物を必ずしとめることから、大願成就。
あゆ:夏の風物詩。
なす:花は必ず実を結ぶことから、大願成就。
その他、金魚・鉄線花・楓など
④秋(7~9月)
秋草:到来する冬を待つ静けさと物悲しさをあらわす。
柘榴:種が多いことから子宝の象徴。
柿:晩秋の風物詩。
紅葉:楓の異称だが、その美しさは桜と同等。
その他、菊・萩・桔梗・山茶花・りんどう・鴫など
⑤冬(10~12月)
南天:「難を転ずる」。福寿草と並べて「難を転じて福となす」。
その他、万両・千両・寒牡丹・寒椿など
⑥節句
桃:立雛、桃
端午:武者、鯉、兜、菖蒲、龍門
⑦仏事
南無阿弥陀仏:浄土宗、浄土真宗(西・東)
南無釈迦無尼仏:曹洞宗、臨済宗など禅宗
南無大師偏上金剛:真言宗
南無妙法蓮華経:日蓮宗(曼荼羅が多い)
その他、各宗派十三佛・観音・蓮など
⑧慶事・縁起物
松竹梅鶴亀:めでたい松竹梅と千年の鶴、万年の亀。正月掛け。
高砂:結納の時には欠かせません。ないと恥となる旨を話す。
赤富士:一年に一度あるかないかの奇跡。神々しい雄姿には力強い開運があるとされる。年中掛けにも。
四神相応山水:北に玄武、東に青龍、西に白虎、南に朱雀、その中心となる住まいには黄龍が住みつくという伝説から四神が住まいのまわりを守護し、地相・家相の難を払うとされます。
⑨その他
床の間以外のインテリアとして壁掛け・玄関掛けに、干支もの・趣味掛け・変わり表装など、玄関・居間などにインテリアとして使用していただけます。
現在、若者を中心にマンション住まいの方が多くなってきました。
マンションには実際、額装の方が多く使用されていますが、日本の伝統である掛軸(横物・アンドンサイズなどの丈の短いもの)を床の間以外の壁面を使用して掛けていただくことにより、部屋の雰囲気がガラッと変わります。

さいごに
本日は、掛軸の名称と取り扱いの手順についてお話ししました。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いします。